吾妻郡の歴史に浸れるアナザールート。「もうひとつの国道292号」で渋峠に向かってみた
東京から渋峠に行くとなると、吾妻線・長野原草津口駅まで輪行するのがオーソドックス。まずは草津町に上がり、そこからさらにのぼって渋峠を目指すことになります。
Google Mapsで経路案内させると、こんな風に西進して国道292号(R292)を行くルートが推奨されます。渋峠に行くときはなんとなくこちらを使いがちだったのですが、よく見ると東側にもR292が存在していて、そちらを行くのもナシではない模様。
西側のR292はよく整備されていますが交通量が多いうえ、勾配もキツめ。積極的に走りたいという感じでは正直ありません。そこで今回は、東側にある、もうひとつのR292を通って草津町&渋峠を目指してみました。
鉄道遺構あり、古い養蚕農家あり、いい感じの峠道あり
Wikipediaを読むと、西側のR292は以前は有料道路で、東側のR292はその迂回路(無料でいけるルート)として国道に指定されたみたいです。
白砂川沿いを北上していきますが、この白砂川の水は濁ったエメラルドブルー。これは川の水が酸性だからだそうです。
水源の白根山は硫黄を含んだ火山で、染みこんだ雨水はpH値3の強酸性の水として湧き出します。そのままだと飲めないし魚なども住めないので、上流の品木ダムで中和事業を行いpH5〜6程度にしているそうです。結果、こういった色になってると。
白根山は渋峠の手前にあります。自分からしたら「絶景渋峠」の一部ですが、現地の人からすると「そんな風に対処しないといけない自然」なんだなぁと。
R292はこのあたりでは「白砂渓谷ライン」という名前になっています。展望が開けると件の白根山が見えます。ここからあそこまで行けると思うとやっぱテンションあがります。
白砂渓谷はけっこう急峻で、沿道の風景には迫力があります。良い。
それから六合(くに)という村(現在は中之条町に編入)を通過します。古い養蚕農家が保存されていて、ちょっといい雰囲気です。今回は時間の関係で立ち寄りませんでしたが、村内には幕末の蘭学者・高野長英が隠れていた旧家なんかもあるようです。
六合の沿道でいちばん良かったのは、旧太子駅(おおしえき)という鉱山鉄道遺構。かつて近くにあった群馬鉄山で採掘された鉄鉱石を、京浜地区まで輸送するために開業されたそうです。
空中ケーブルで運んできた鉄鉱石を保管していたホッパー棟は、古代ローマの遺跡のような雰囲気。
なぜか大井川鐵道の貨車?もあったり。
僻地と思いきや、実は日本の歴史や経済発展としっかりつながりをもっていた、というのがさらっと見てとれてなかなか熱い。
いい感じの岩山やら洞門をパスすると、草津町への上りに入ります。
舗装は荒れ気味ですが、R292(西側)より圧倒的に交通量が少なく、落ち着いた雰囲気です。
なんかいい。バス停かな?と思いましたが、中には崖の下にある集落とをつなぐ階段がありました。
大きくうねる峠道が続きます。個人的には、R292(西側)の急勾配ドストレートよりもずっと楽だなーと。勾配も緩やかに感じましたが、クルマが少なくて気楽に走れるからそう感じただけだったかも。
歴史的な建造物がけっこうな密度で沿道に存在し、見える風景も良いです。R292(西側)より若干遠回りにはなりますが、それ相応の味わいがあり、雰囲気のいい道が好きな人にはかなりおすすめ。