東京デスライド(旧)

自転車で「自分的に限界ギリギリ」のライドをしたら更新します。

カンパニョーロ・シャマルミレ・1,600kmインプレ:一言で言うなら「レース用」

2017年のGWに鉄下駄ホイールから、カンパニョーロのハイエンドアルミクリンチャー「シャマルミレ」に換装しました。この記事は1,600km走った時点でのインプレッションになります。

まず、鉄下駄→シャマルミレの換装ですぐに感じた点をまとめます。

  • 巡航速度がそれなりに上がった(ぼくの場合は2km/hほど)
  • ヒルクライムがマジで楽になった(1日の限界獲得標高1,500m→2,500m以上)
  • コンチネンタルグランプリ4000SIIだと乗り味はかなりかっちりしているが、疲労につながるわけではない
  • ブレーキは本当によく効く

「走るのがある程度楽になり、より速く走れるホイール」というのは確定だと思いますが、今回はもっと細かい点を書きます。実売13〜15万円である以上、この程度のパフォーマンスは当たり前。その上で「ライダーとの総合的な相性がいいか」こそが真に重要です。そのため、このインプレではロングライド志向であるぼくがどうシャマルミレを評価するかを書いています。

長いので最初に書きますが、結論は「エントリーグレードのカーボンフレームとシャマルミレが合わない気がするから、フレーム換えるわ」です。興味があれば最後までお読みください。

高負荷環境で生きる剛性の高さ

シャマルミレで目立つのは剛性の高さ。ダンシングで踏んでも歪むことなく、推進力に変換される感じがします。この高剛性の恩恵を一番受けたのは、富士ヒルのときです。斜度がアップするワインディングはトルクをかけて一気に抜けるのが効率的なので毎回そのようにしていましたが、シャマルミレでそれをやるとほかの参加者を何人も抜けました。ぼくは急斜面で相対的に速く走れたわけです。それはシャマルミレがトルクをかけるほど応えてくれるホイールだからということになるでしょう。

平坦でも「ダンシングで踏んだときに加速する」という印象は変わりません。ぼくの脚力だと35〜37km/hあたりで「壁」を感じるので、それ以上に上げることは積極的にはしませんが、ダンシングをすれば上げること自体は容易です。鉄下駄はダンシングをしても加速感がなかったのでほとんどやりませんでしたが、シャマルミレ換装後は加速目的でのダンシングを多用しています。

このように、シャマルミレのアドバンテージは「ダンシングで踏んだとき」に一番感じられます。

一番このホイールにしてよかったと思ったのが、平均心拍数174bpm(最大心拍数の約90%、Strava推定90分平均182W)で走った富士ヒルだったというのは、このホイールの特徴をよく表しているように思います。シャマルミレの性能が最大限に発揮される負荷がどの程度かはぼくの脚ではわかりませんが、たぶん、NP300W以上のライダー向けに設計されているでしょう。非常にレーシーなホイールなのではないでしょうか。

「低〜中負荷での効率」が微妙な理由を考える

次に「ロングライドで重要になる低〜中負荷の巡航」「主観的な楽さ」にどう影響したのかについて書きましょう。ぼくが真にシャマルミレに期待したのがこれらでしたが、先に述べたように一定の効果は得られつつも「満足できた」とは言い難いです。

本題に入る前に、ぼくが使っているフレームのスペックを示します。Anchor RFX8 Equipe 2012 Editionという中古で買ったフレームで、ジオメトリーはエンデュランス系。剛性を犠牲にして快適性に振ったエントリーグレード・カーボンフレームです。鉄下駄のときは「フレームに対する不満」はあまりなかったのですが、換装後は「次にアップグレードするならフレーム」と考えるようになりました。つまり、ホイールとフレームの相性が悪いと感じているのです。

その理由は「自分的に効率的な回転重視で走ったときに力が伝わらない感じがする」ことにあります。ここで言う「効率的」は「特定の負荷で走ったときの体力消費が少ない感じ」を意味します。

ぼくのペダリングは回転系で、友人と比べて10〜20回転ほど多く回します。ケイデンスでいうと90〜105が一番楽です。同じ速度で走るならギア比ではなく、ケイデンスを上げます(低ギア比・高ケイデンスのほうが、高ギア比・低ケイデンスよりも明らかに消耗が少ない)。シャマルミレで非常に効率的に感じるダンシングですが、そもそもぼくはダンシングを好まないのです。シッティング・一定ペースで刻むほうが合っており、ホイール換装に期待したのもこうした走り方でより効率的に走れることでした。このように「低〜中負荷での効率」を重視するのは、ぼくが最後に触れるようにロングライド志向の乗り手だからです。

そして、そんなぼくとシャマルミレをアセンブルされたロードバイクの間にミスマッチが生じたわけです。

シャマルミレで「効率的」なのは「高負荷」なのです。GarminやStravaのデータをホイール換装前後で比較すると、巡航域の速度アップに伴い、心拍数も上昇していました。これに対して高負荷域では、心拍数は変わらないのに対して速度は大幅に上昇していました。これが意味するのは、「巡航域での速度自体は上がっているが効率自体はさほど伸びていない」ということになるはずです(効率が上昇しているのなら、速度の伸びに対して心拍数の上昇は抑えられる)。

結果として、自然と効率的かつ速く走れる高負荷よりの走り方になり、自分的に楽な走り方ではなくなってきました

問題は「なぜ回転重視だと効率がいいと感じられないのか?」です。これはどうしても体感になってしまいますが、「回転重視で走ろうとすると、力が下に逃げてしまう」という印象です。別フレーム同ホイールで比較することができないので他フレームを試乗した経験からの推測になりますが、一般的にエンデュランス系より剛性の高いレース向けフレームでは回すだけでもある程度の加速感が得られたので、フレームの味付けとシャマルミレの特性、そしてライダーの性質が噛み合っていない可能性が高いと思いました(ペダリングが適正でないという可能性もありますが、よりセッティングが雑な試乗車でそれが感じられないのが謎。何かしらの面でフレームと相性が悪いのはまちがいない──おそらくはフレーム剛性の問題か?)。

シャマルミレは誰のためのホイールなのか?

総合的なインプレッションは「シャマルミレは最大100〜150km程度のワンデーライドに向いたホイール」となります。積極的に踏んで加速し、定められた距離で体力を使い果たすように走るのに向いたホイールなのではないでしょうか。この性質は各種レース目的でロードバイクに乗る人なら歓迎でしょう。

しかし、ぼくがもともと得意なのは低〜中負荷で延々走り続けることだし、そういう走り方をしたい。ミニベロで200km走ったり、ロードバイクに乗り換えてからすぐに350kmほど走ったりと、長めのコースを走破してきました。最近ヒルクライムばかりしていているのは、「今乗っているロードバイクアセンブルだと長距離を意識した走り方にあまり効率的な感じがしないから」。要はロングライドがちょいだるいと感じている。100〜150kmで使い果たすような走り方に向いたロードバイクは自分には合いません。シャマルミレに換装したことでそんな感じになってしまったので、新しい走り方を練習できる反面、斜め上感があるというのが正直なところです。

そこでぼくが出した結論は「フレームを換えよう」。「フレームと相性のいいホイールを探す」という選択肢もあるのにそれを考えていないのは相対的に印象が悪いのがフレームだからです。快適性に振ってはいるけれど、そのメリットはそんなに感じられない…。むしろ、シャマルミレのほうが「総合的な快適性」には貢献しているんですよね。毎週末1,500mUP以上のヒルクライムができるようになり、200km程度のライドならコンスタントにできる。そこまでハイスペックなホイールが低〜中負荷で微妙に感じるなら、フレームをアップグレードしたほうがいいんじゃないの?という感じです。

今のフレームは「カーボンの扱いに慣れる」という意味で中古で買ったという側面が強く、早くも役目を終えて本命に買い換える時期が近づいているだけとも言えます。

そういう意味でホイール換装はとてもいい経験になりました。よく言われるフレームやホイールへの不満がどういうところに起因するのかちょっとわかった感じ。たぶん一般的にはこれを「自転車沼」と言うのだと思います。