東京デスライド(旧)

自転車で「自分的に限界ギリギリ」のライドをしたら更新します。

ローディを殺すのに坂はいらない。軽井沢『風立ちぬ』ライドがメンタルを滅ぼす

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旧軽井沢ジブリみを感じながら。前を行くのは「ロードバイク辛みのデスロード」の中川苦行氏。

 

ここまでの累積距離は380km。4日目は高崎から横川駅まで輪行して、いつも一緒に走っているRapha信者の中川苦行氏と合流し、碓氷峠を越えて軽井沢観光に向かいます。

 

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スタート地点の横川駅はどこかレトロな雰囲気。

 

中川氏は脚質が坂に対してクレーマーなので、この日は(今までに比べれば)緩めのコース設定。調整が上手く行っているので僕はハードなコースでもいけそうでしたが翌日も考えて、ガチゆるぽたライドを1日挟みます。

 

コースは以下の通り。

 

 

  • 走行距離:47km
  • 獲得標高:1,223m

 

新緑の碓氷峠は控えめに言って最高!

 

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碓氷峠までは味のある街道になっている。少し暑いがのどかで心地が良い。 

 

有名なめがね橋などの鉄道遺構を横目に、緑鮮やかな峠をまったり登ります。斜度は最大で8%くらい、5月に観光ライドで足を運ぶならかなりおすすめです。

 

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碓氷峠の辺りは山の形が独特。知らない土地を走っていると感じられる瞬間のひとつだ。

 

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有名な鉄道遺構「めがね橋」はグループライドをしているローディたちやバイカー、行楽客で賑わっていた。

 

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こんなのも。明治〜大正時代、産業化期の名残りである。 

 

ペースは中川氏に合わせてまったり。だらだらだべりながら走るのも楽しいので速度は全然気にならない(何より前日までに激しいヒルクラは満喫済み)。

 

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碓氷峠は新緑真っ盛り。

 

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ワインディングも緩やか。

 

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天気も良く、デスライドのデの字もない…ように見えた。

 

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碓氷峠を抜けると軽井沢はすぐそこ。初心者フレンドリーな峠だと思います。

 

軽井沢『風立ちぬ』ぽたはヒルクラより心がきつい新型デスライド

 

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軽井沢に最初に建てられた別荘の窓から。

  

スタジオジブリの映画『風立ちぬ古き良き時代のロマンスとともにひとつの時代の終焉を描いたこの作品は、堀辰雄の同名小説を下敷きにし、実在の航空機技師・堀越二郎やドイツの古典小説『魔の山』をミックス。格調高い雰囲気を持ちつつも現代の若者への強いメッセージ性も持った傑作であることは、多くの人が知っているはず。

 

個人的には耳をすませば』と肩を並べる刺客映画です。上映時に1人で観に行って、ほかがみんなカップルで来ているのを見たうえに内容があれだったので無事死亡しました(『秒速5センチメートル』よりきつかった)。

 

その舞台は軽井沢。中川氏の粋な計らいで、その世界を味わおうというのが4日目の目玉です。

 

万平ホテル

 

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旧軽井沢にあるビンテージホテル「万平ホテル」。カフェやレストランのみの利用はもちろん、中を見学することもできる。

 

まず訪れたのは、レトロな外観と雰囲気がすばらしい、万平ホテル。作中で主人公・堀越二郎がドイツ人・カストルプ氏と出会い、ドイツの民謡「リンデンバウム」を歌ったホテルでのシーンそのもの。

 

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豪奢なエントランスには上品な活気が。ある意味、ステレオタイプな上流階級の社交場といった風情が良い。

 

同作のカストルプ氏は『魔の山』に登場する同名主人公がモデル。原作では結核療養のためにスイスの保養地・ダボスに引きこもりますが、結果として当時勃発した第二次世界大戦から兵役逃れをするような形に。どんどん厭世観を強めていくカストルプ氏は体調が良くなっても引きこもり続け…というお話です。

 

つまり、万平ホテルは現実逃避の象徴…!

 

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ホテルのステンドグラス。映画『シャイニング』の舞台もこんな感じだったな…。あれも作家が冬季にリゾートホテルに引きこもってあれこれするって話で現実逃避感が(閑話休題)。

 

ここでGWも終わりに近いことに気づき、社会復帰したくねぇという話に。誰か軽井沢に別荘を買ってください。僕が管理人として住み込むので。よろしくお願いします。

 

ショー礼拝堂&別荘

 

そんな厭世的避暑地のイメージを作り上げた罪人はイギリス人・ショー神父。神父なのに罪人ってこれもうわかんねぇな?

 

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瀟洒な礼拝堂が残っている。内部は撮影禁止です。

 

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軽井沢で最初に建てられたショー神父の別荘。

 

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中を見学できる。サナトリウムっぽくて収容されたみしかない

 

軽井沢グルメで現実逃避欲を忘却せよ

 

GW終了まであと4日という現実と、先に紹介したような場所で心ゆくまでリゾートできてしまう人々との格差を感じてダメージを負った我々は、軽井沢銀座に移動。とりあえず何か食べて現実逃避欲からさらに逃避しようと試みます。

 

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ソーセージのお店「腸詰屋」。店内ではさまざまなソーセージを試食し放題という太っ腹ぶり。

 

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店頭ではソーセージを焼いてホットドッグにして売っている。今回選んだのはスパイシー味。

 

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上品な甘さと濃いモカの味が晴れた日には最高な「ミカドコーヒー」のモカソフト。長蛇の列ができていましたが、回転は速いのでさっさと並んでしまいましょう。

 

中川氏はこの手のオサレ観光地巡りコースを引くのがとても上手です。斜度では死なない僕のメンタルを的確に殺してくれました。何でGW、終わってしまうん…。

 

浅間山の麓で肉

 

その後、日本ロマンチック街道を登り、宿泊地である北軽井沢へ。

 

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日本ロマンチック街道から見える浅間山

 

この道は名前に反して、最大斜度14%ほどで道も荒れ気味、延々林の中を走り続けるなかなか過酷な登りです。GWで交通量も多く、中川氏は見事に死亡

 

北軽井沢に到着した我々は早速「浅間牧場」で食事を摂ることに。ここまで毎日獲得標高1,000mオーバー、ネカフェとコンビニ飯で過ごしてきた僕はもう我慢できませんでした。

 

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ヒャッハー、肉だぁぁぁぁ。

 

人間らしい食生活に帰ってきた!ネカフェ泊やコンビニ飯はコストカットの意味が大きかったのですが、そうやってQOLを最低まで落とすと文明や人間のサービスに感動できるので、個人的にはアリです。

 

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リアルパカさんもいました。

 

 全部一緒に走らなくてもいい

 

なお、僕と中川氏は走力にかなり差があるとともに、「旅観」もまったく異なります。中川氏はある程度きちんとした宿泊施設に泊まってグルメもしたいタイプ。僕はひたすら走りまくって絶景を観れればいいタイプ。双方の希望を完全に同時に満たすのはよほどの資金力がないと厳しいというのが現実でした。

 

でも「GWにはどこか走りに行きたいとよね」という話になっていたので、途中から中川氏が合流するという選択を取りました。徹頭徹尾同じコースを走ろうとすると走力差や旅観ちがいでプランがまとまりませんが、「走力が高い人のコースに途中から初心者・QOLを維持したい人が合流する」ようにすれば無理なく楽しめます。もちろん、走りメインで旅をしたい人は合流までに徹底的にハードなコースを走ってある程度満足しておく必要があります。

  

また、参加者の得意分野に合わせてコース引きを担当すると、旅の満足度が跳ね上がります。碓氷峠以降の旅程プランを観光地に強い中川氏に任せた結果、僕だけでは作れない、おもしろい旅になったと思っています。おかげでローディを殺すのは坂だけではないということがよくわかりましたね。本当にありがとうございます。