東京デスライド(旧)

自転車で「自分的に限界ギリギリ」のライドをしたら更新します。

有間峠を秩父側に下るとホラーが待ってる

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こっち見んな

 

長らく通行止めになっていた飯能の有間峠が2017年7月上旬に開通しました。

 

首都圏近郊有数のヒルクラスポット・飯能には数多くの峠がありますが、全体的に距離が短く斜度がきつい傾向にあります。

 

そんな中で有間峠は全長10km。ほかの峠と組み合わせることでヒルクライムのバリエーションを楽しめるのではないかと気になっていました。

 

早速行ってみたんですが、下る方向を間違えたかもしれない

 

長い、だるい、ぼっちはつらい

 

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まず、名栗湖(有間ダム)まで登ります。写真は1km弱だけど勾配がきついことで有名な「名栗湖前の激坂」ですね。

 

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名栗湖の脇を抜けて先に進みます。

 

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ガレガレだし秘境感すごいな…。

 

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行き止まり。道間違えとるやんけ

 

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気を取り直して、はい、よーいスタート。

 

舗装は比較的綺麗ですが、砂利っぽいところが多いです。

 

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へびしゃん。

 

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沢の近くはやっぱり涼しい。

 

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まぁまぁいい感じの滝。

 

…なんだけど、景色が開けないまま10km登るので飽きる…

 

駅近なのを考えると、グループライド向けの峠かなと思います。とにかく単調なんで、誰かとダベりながらだらだら登りたいやつ。

 

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頂上からの景色はなかなか。

 

恐怖のダウンヒル

 

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来た道を引き返してもいいのですが、実は秩父側にも下れます。今回は登りが退屈すぎたのでダウンヒルは刺激を求めて未知なる秩父側へ。

 

この選択がぼくの運命を大きく変えることになった。戯れが常に良い結果に結びつくわけではないということだ。

 

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山道を道なりに下っていくと水量が激減した浦山ダムが見えてきた。梅雨明けも近いが、今年は大雨が続いた記憶もない。

 

そういえば、香川県民は水不足になると高知や徳島から水をもらってきてうどんを茹でるという。今年の四国では主食の違いが悲劇をもたらすかもしれない。

 

【参考リンク:香川の渇水対策って? | 毎日新聞

なるほドリ:香川の渇水対策って? /香川 | 毎日新聞

 

そんなとりとめのないことを考えていたときだった。ぼくは道端から粘っこい、夏の湿気のような視線を感じた。

 

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そちらを見てぎょっとしたが、何のことはない、ただの木像だった。どうやらスフィンクスを象ったもののようだ。

 

だが、視線はひとつではなかった。

 

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狛犬、なのか?

 

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よく見れば、道端には奇妙な彫刻がいくつも並んでいる。

 

なぜこんなものが…?

 

言いようのない居心地の悪さを感じずにはいられなかった。

 

──……だぁ

──だなぁ

──ハハハハハ

 

今度は背後から話し声が聞こえた気がした。振り返ると、テントが張ってあって、その中で地元の人たちが何やら談笑しているように見えた。

 

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日曜日だから、地区行事の準備でもしているのだろうか。

 

……

………

 

声が止んだ。

 

気に障ることでもしてしまったか?

 

写真を撮ったのがまずかった?

 

そうだ、撮影許可はもらわないと。

 

──すみません、写真を…。

 

ぼくはそこで気づいた。最初から声なんか聞こえるはずがないことに。

 

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テントの中にいたのは、人形だったからだ。

 

ダウンヒルで身体が冷えたわけでもないのに、背筋が冷たかった。

 

……

………

 

この辺は作り話です。

 

これらの彫刻・人形は地元のアーティストの方が製作し、ツーリズムの一環で道路脇に設置されたもののようです(それっぽいことが書かれた看板がありましたが、詳細は不明)。おかげさまで妄想が捗って楽しかったです。

 

その後は、秩父駅まで下りました。有間峠の頂上から20〜30kmほどでしょうか。わらじカツ丼を食べ、レッドアロー号で帰宅しました。

 

名栗近郊には、焼きカレーで有名なカフェレストラン「ターニップ」やスイーツがおいしい有名店「Cafe Kiki」など、グルメスポットが多いこともあって、秩父側に下る人は少ない気がしますが、有間峠や山伏峠を登ったあとは秩父駅から輪行するのもバリエーションとしてアリだと思います。

 

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ちなみに、わらじカツ丼は秩父駅のフードコートで食べましたが、ふつうにボリューミーでおいしかったです(約1,000円)。地元の名店はほぼいつでも並んでいるので、割り切ってこちらで食べてしまうのもいいんじゃないかと。

標高2,000m以上を走れば猛暑日でも滅ばないでしょ

(坂シャブしたいだけでは)ないです

突然ですが、夏場における山岳ライドのメリットを考えてみましょう。

  • 標高が高いのでそもそも平地より涼しい
  • 山間部は木が多いので、木陰を走れる
  • 風が吹いていることが多い

ローディ最大の敵・熱中症を避け、避暑ライドでチャリ充できるのは確定的に明らか。

じゃあ大勝利してきますね。

都内>奥多摩自走はいいぞ

はい、よーいスタート。

朝2時に都内を出発。

早朝の青梅街道の気持ちよさ。

日の出直前の奥多摩・御嶽付近の味わい深さ。

電車が走っていない田舎の鉄道ってなんでノスタルジックに感じるんだろう。

早朝に奥多摩湖を見るのは初めて。夏の朝だ。

山梨に向かう大菩薩ラインに突入。日が昇っていますが、車道は木陰になっていて快適(斜度はふつうにきつい)。

奥多摩の果て、柳沢峠に突入。すでに日は高く、写真のコントラストがすごいことに。

茶屋で休憩しよっか。

小川のせせらぎ is 最高。気温は20度ちょっとだったと思います。やっぱり山なんだよなぁ。

片岡鶴太郎さんもおすすめ、旅館「はまやらわ」のわらび餅。この上品な甘さを森の中で味わう贅沢。

標高は1,400mほど。山々は夏らしい緑色。

登りでほどよく上がった体温を走行風が冷ましてくれる、夏ならではのダウンヒル。そして立体感ある鉄橋がすばらしい。

夏こそ山Q.E.D.証明完了です…。

標高2,000m以上はもっと快適じゃろうて

そんなわけで山梨県に突入。ここまで走行距離130km・獲得標高2,000mほど。しかし、今回の真の目的は長野・山梨県境にある自動車道最高標高地点・大弛峠、標高2,365m

まだいくぞ。

いきなりGarminが壊れた。最高気温43度をマーク。

柳沢峠を下った先は甲府盆地、この日の関東一帯は猛暑日だったので盆地パワーでとんでもない気温に。

大弛峠まで10kmほどでしょうか。果樹園地帯を突っ切るフルーツラインなる道を走ったのですが、これが完全なる鬼門。

おいしそうだね(直射日光に焼かれながら)。

おいしそ(略)。

果樹は背が低く、日光を遮ってくれません。そしてうれしいことに無風です。大弛峠に近づくにつれて平坦ではなくなりますが

ここからは写真なしです。直射日光を浴びながらたらたら撮影していると熱中症まっしぐらと思ったので。

大弛峠まとめ

大弛峠を登るコースは全長30kmとされますが、実際はおおまかに4パートにわけられます。大弛峠自体は16km800mUPほどですが、前座で1,000mほど登らされる形です。

  1. 斜度10%程度を登る果樹園地帯
  2. 中間地点にあたる琴川ダムまでの林道区間
  3. 斜度3%程度の緩い登りが続く大弛峠前半
  4. 6kmで600m弱UPする、斜度10%程度の大弛峠本番区間

きついのは1と2と4です。ほとんどじゃねーかたまげたなぁ…。

1の果樹園地帯は前述の通り、直射日光に晒されるのがヤバすぎです。ぼくの場合、ボトル1本、ジェル1個、塩梅半分がここで消えました。斜度もきついので消耗が半端ないです。

2の林道区間は木陰に入るので1の果樹園地帯よりはマシですが、**長くて斜度8%程度が続くうえ、景色が微妙なのでふつうに苦行です。

今回は1のせいで補給物質が足りず、中間地点にあった登山者向け宿泊施設「金峰山荘」で強制休憩となりました。

金峰山荘 | 山小屋民宿、新宿から2時間!山紫水明の別世界。

真夏でなくともここでの休憩なしに登り切るのはきついでしょう。

大弛峠本体は10kmほどゆるゆる登ってから一気に斜度アップするタイプ。本番区間は6km斜度10%ほどあり、相当なしんどさです。前半が本当に緩いので後半きついのが読めてしまうのがまたイヤな感じ

景色も終始開けません。ずっと森の中です。

これはゴール地点も同様です。

この写真はよく見かけると思うのですが、景色がよくないからこれ以外撮りようがないんですよね。一般的な言い方をすればクソ坂です。

予定ではゴール地点から徒歩で展望台「夢の庭園」まで登る予定だったのですが、電車に間に合わなそうだったので今回は断念しました。これはリベンジ確定ですね…。行きたい人がいれば一緒にどうですか? 楽しいですよ

でも実際山は快適

大弛峠はそもそもしんどいのでこうなるのも致し方ないのですが、林道系自体はおすすめできると思います。

大弛峠も林道区間に入れば直射日光を避けられましたし、本番区間は今の季節でもひんやりしていて、体温上昇で苦しむことはありませんでした(もちろん、経験値や体格で感じ方には個人差があるでしょう)。

今回のライドで一番ヤバかったのは、明らかに猛暑&強烈な日差しに晒される、標高が低めの山梨盆地でした。特に大弛峠に近づき、斜度がきつい区間ではリアルに命の危険を感じました

今回の結論は、山がどうこうというより「夏は木陰を走れるコース(標高が高いとモアベター)を選び、酷暑&直射日光を避けるべき」ということになるでしょう。

首都圏近郊だと、サイクリングロードや沿岸部より、箱根や飯能のほうが安全かもですね。特に箱根の新東海道はレイアウト的に直射日光が当たらない区間が多いうえにコンビニも多いので水分補給しやすくて良さげです。

記事ではあんまり触れていませんが、補給ポイントは毎回ぎっちり調べて走っています。水を補給できないケースが一番ヤバいので。リスクヘッジしつつ夏のライドを楽しみたいもんです。

この記事の内容自体は山キチのみなさんには常識な気がしますが…。

カンパニョーロ・シャマルミレ・1,600kmインプレ:一言で言うなら「レース用」

2017年のGWに鉄下駄ホイールから、カンパニョーロのハイエンドアルミクリンチャー「シャマルミレ」に換装しました。この記事は1,600km走った時点でのインプレッションになります。

まず、鉄下駄→シャマルミレの換装ですぐに感じた点をまとめます。

  • 巡航速度がそれなりに上がった(ぼくの場合は2km/hほど)
  • ヒルクライムがマジで楽になった(1日の限界獲得標高1,500m→2,500m以上)
  • コンチネンタルグランプリ4000SIIだと乗り味はかなりかっちりしているが、疲労につながるわけではない
  • ブレーキは本当によく効く

「走るのがある程度楽になり、より速く走れるホイール」というのは確定だと思いますが、今回はもっと細かい点を書きます。実売13〜15万円である以上、この程度のパフォーマンスは当たり前。その上で「ライダーとの総合的な相性がいいか」こそが真に重要です。そのため、このインプレではロングライド志向であるぼくがどうシャマルミレを評価するかを書いています。

長いので最初に書きますが、結論は「エントリーグレードのカーボンフレームとシャマルミレが合わない気がするから、フレーム換えるわ」です。興味があれば最後までお読みください。

高負荷環境で生きる剛性の高さ

シャマルミレで目立つのは剛性の高さ。ダンシングで踏んでも歪むことなく、推進力に変換される感じがします。この高剛性の恩恵を一番受けたのは、富士ヒルのときです。斜度がアップするワインディングはトルクをかけて一気に抜けるのが効率的なので毎回そのようにしていましたが、シャマルミレでそれをやるとほかの参加者を何人も抜けました。ぼくは急斜面で相対的に速く走れたわけです。それはシャマルミレがトルクをかけるほど応えてくれるホイールだからということになるでしょう。

平坦でも「ダンシングで踏んだときに加速する」という印象は変わりません。ぼくの脚力だと35〜37km/hあたりで「壁」を感じるので、それ以上に上げることは積極的にはしませんが、ダンシングをすれば上げること自体は容易です。鉄下駄はダンシングをしても加速感がなかったのでほとんどやりませんでしたが、シャマルミレ換装後は加速目的でのダンシングを多用しています。

このように、シャマルミレのアドバンテージは「ダンシングで踏んだとき」に一番感じられます。

一番このホイールにしてよかったと思ったのが、平均心拍数174bpm(最大心拍数の約90%、Strava推定90分平均182W)で走った富士ヒルだったというのは、このホイールの特徴をよく表しているように思います。シャマルミレの性能が最大限に発揮される負荷がどの程度かはぼくの脚ではわかりませんが、たぶん、NP300W以上のライダー向けに設計されているでしょう。非常にレーシーなホイールなのではないでしょうか。

「低〜中負荷での効率」が微妙な理由を考える

次に「ロングライドで重要になる低〜中負荷の巡航」「主観的な楽さ」にどう影響したのかについて書きましょう。ぼくが真にシャマルミレに期待したのがこれらでしたが、先に述べたように一定の効果は得られつつも「満足できた」とは言い難いです。

本題に入る前に、ぼくが使っているフレームのスペックを示します。Anchor RFX8 Equipe 2012 Editionという中古で買ったフレームで、ジオメトリーはエンデュランス系。剛性を犠牲にして快適性に振ったエントリーグレード・カーボンフレームです。鉄下駄のときは「フレームに対する不満」はあまりなかったのですが、換装後は「次にアップグレードするならフレーム」と考えるようになりました。つまり、ホイールとフレームの相性が悪いと感じているのです。

その理由は「自分的に効率的な回転重視で走ったときに力が伝わらない感じがする」ことにあります。ここで言う「効率的」は「特定の負荷で走ったときの体力消費が少ない感じ」を意味します。

ぼくのペダリングは回転系で、友人と比べて10〜20回転ほど多く回します。ケイデンスでいうと90〜105が一番楽です。同じ速度で走るならギア比ではなく、ケイデンスを上げます(低ギア比・高ケイデンスのほうが、高ギア比・低ケイデンスよりも明らかに消耗が少ない)。シャマルミレで非常に効率的に感じるダンシングですが、そもそもぼくはダンシングを好まないのです。シッティング・一定ペースで刻むほうが合っており、ホイール換装に期待したのもこうした走り方でより効率的に走れることでした。このように「低〜中負荷での効率」を重視するのは、ぼくが最後に触れるようにロングライド志向の乗り手だからです。

そして、そんなぼくとシャマルミレをアセンブルされたロードバイクの間にミスマッチが生じたわけです。

シャマルミレで「効率的」なのは「高負荷」なのです。GarminやStravaのデータをホイール換装前後で比較すると、巡航域の速度アップに伴い、心拍数も上昇していました。これに対して高負荷域では、心拍数は変わらないのに対して速度は大幅に上昇していました。これが意味するのは、「巡航域での速度自体は上がっているが効率自体はさほど伸びていない」ということになるはずです(効率が上昇しているのなら、速度の伸びに対して心拍数の上昇は抑えられる)。

結果として、自然と効率的かつ速く走れる高負荷よりの走り方になり、自分的に楽な走り方ではなくなってきました

問題は「なぜ回転重視だと効率がいいと感じられないのか?」です。これはどうしても体感になってしまいますが、「回転重視で走ろうとすると、力が下に逃げてしまう」という印象です。別フレーム同ホイールで比較することができないので他フレームを試乗した経験からの推測になりますが、一般的にエンデュランス系より剛性の高いレース向けフレームでは回すだけでもある程度の加速感が得られたので、フレームの味付けとシャマルミレの特性、そしてライダーの性質が噛み合っていない可能性が高いと思いました(ペダリングが適正でないという可能性もありますが、よりセッティングが雑な試乗車でそれが感じられないのが謎。何かしらの面でフレームと相性が悪いのはまちがいない──おそらくはフレーム剛性の問題か?)。

シャマルミレは誰のためのホイールなのか?

総合的なインプレッションは「シャマルミレは最大100〜150km程度のワンデーライドに向いたホイール」となります。積極的に踏んで加速し、定められた距離で体力を使い果たすように走るのに向いたホイールなのではないでしょうか。この性質は各種レース目的でロードバイクに乗る人なら歓迎でしょう。

しかし、ぼくがもともと得意なのは低〜中負荷で延々走り続けることだし、そういう走り方をしたい。ミニベロで200km走ったり、ロードバイクに乗り換えてからすぐに350kmほど走ったりと、長めのコースを走破してきました。最近ヒルクライムばかりしていているのは、「今乗っているロードバイクアセンブルだと長距離を意識した走り方にあまり効率的な感じがしないから」。要はロングライドがちょいだるいと感じている。100〜150kmで使い果たすような走り方に向いたロードバイクは自分には合いません。シャマルミレに換装したことでそんな感じになってしまったので、新しい走り方を練習できる反面、斜め上感があるというのが正直なところです。

そこでぼくが出した結論は「フレームを換えよう」。「フレームと相性のいいホイールを探す」という選択肢もあるのにそれを考えていないのは相対的に印象が悪いのがフレームだからです。快適性に振ってはいるけれど、そのメリットはそんなに感じられない…。むしろ、シャマルミレのほうが「総合的な快適性」には貢献しているんですよね。毎週末1,500mUP以上のヒルクライムができるようになり、200km程度のライドならコンスタントにできる。そこまでハイスペックなホイールが低〜中負荷で微妙に感じるなら、フレームをアップグレードしたほうがいいんじゃないの?という感じです。

今のフレームは「カーボンの扱いに慣れる」という意味で中古で買ったという側面が強く、早くも役目を終えて本命に買い換える時期が近づいているだけとも言えます。

そういう意味でホイール換装はとてもいい経験になりました。よく言われるフレームやホイールへの不満がどういうところに起因するのかちょっとわかった感じ。たぶん一般的にはこれを「自転車沼」と言うのだと思います。

10カ月で8,000km走ったので富士ヒルに出てみた

2017年3月、いつも一緒に走っている中川苦行氏が「富士ヒルに出たい」というので一緒にエントリー。

2016年8月にミニベロに乗り始め、年初からロードバイクに乗り換え。10カ月で8,000kmほど走りました。ヒルクライムレースを意識せずに乗っていたわけですが、どんな結果になるのかはちょっとだけ気になっていました。

富士ヒルで走ったのは以下のコース。

  • 走行距離:24km
  • 獲得標高:1,255m

結果:だいたいブロンズ達成

参加者は10800人、待機場所には自転車がズラリ。

富士ヒルでは、特定タイムを切ると表彰状がランクアップし、それが実力の目安になっています。

  • 65分切り:ゴールド表彰
  • 75分切り:シルバー表彰
  • 90分切り:ブロンズ表彰

ヒルクライムをある程度真面目にやっているアマチュアライダーがとりあえずの目標とするのがブロンズ(90分切り)です。

スタート直前。みんな速そうに見える。

んで、僕のタイムはどうだったかと言うと…。

92分、だいたいブロンズですね(ポジティブシンキング)。

真面目な話、この結果は素直に嬉しかったです。というのも、僕は自転車に乗り始めた段階では体重が80kg近くありました。坂なんてまるで登れない、という状態からのスタートでした。

最初に買ったスポーツ自転車はBianchi Pisa Sport Drop。ホイール径が小さく、非力でもペダルを回しやすいミニベロロード。

僕は初めてのスポーツ自転車としてミニベロロードを選んでいます。その理由は「クロスバイクロードバイクだと坂がのぼれなさそうだから」。通勤で使うつもりだったのですが、経路上には短い坂がいくつもあります。それらを押さないで登れる気がしませんでした。

買って登ってみると息は切れるし汗だくになるし、ほかのローディにはバカバカ抜かれるしで、登りには苦手意識しかありませんでした。

晩秋の入山峠(八王子)をミニベロで登る。

その一方で、坂をどう効率的に登るかを考えるのは結構おもしろかったです。ゲームを攻略している感じですね。乗り始めて3カ月で体重が7kg落ち、都内の坂はある程度登れるようになったので、ミニベロでヒルクライムをスタート。大垂水峠聖蹟いろは坂、百草園、仁田山峠などをクリアしていって、都民の森・和田峠と順番にレベルアップしていきました。

子の権現はロードバイクに乗り換えてからチャレンジ。

ロードバイクに乗り換えてからは、渋峠に行きたかったこともあって、かなり積極的に登りを練習。

でも、登りが速かったわけではないです。練習中はガチで練習しているクライマーに抜かれるだけでした。今でも体脂肪率は高めで、体型的なアドバンテージはないどころか、もっと痩せたほうがいいでしょう。

富士ヒルのゴール地点、富士スバルライン5合目。

そういう状態からの富士ヒル92分。ブロンズは達成できていませんが、都民の森を初めて登ったときは2時間かかったのです。それよりずっと長く厳しいヒルクライムを2時間どころか100分を切って完走できたことのほうが僕にはずっと大事です。走っているときも基本的に常時誰かを追い抜いている感じで、それなりに登れるようになったことがはっきりとわかりました。

別に富士ヒルが大きな目標だったわけではありません。より遠くへ行こうとすると、山岳は避けられず、そこで失速しているようでは行ける場所が限られる。だから、ある程度登れるようになりたいというのが、自分なりに登りを研究し始めた動機です。とはいえ、こうやって数字としてそれなりの結果が出たことはやっぱり嬉しい。

富士スバルライン最終盤には平坦区間がある。非クライマー体型の筆者はここでのスプリントにすべてを賭け、実際には時速40km/hで駆け抜けた。一般公道ではなかなかできない体験であり、凄まじい快感だった。(撮影は試走時)

イマイチ興味のなかったヒルクライムレースですが、公道を閉鎖して自転車だけで走れるというのは結構な非日常体験だということもわかりました(冷静に考えると、世界遺産級の観光資源から車を締め出すって結構すごい)。富士ヒルにもう一度出ることは考えていませんが、また出てもいいかなーという感じになっています。出るなら来年のハルヒルあたりかなー。

日本最高峰を登るという悦楽。富士山スカイラインを登ってきた

「富士山を登らないか」というお誘いがあったので、ホイホイついていきました。今回は、富士山を登る道路の1つ、富士山スカイラインをレポートします。

走ったコースは以下のとおり。

  • 走行距離:60.3km
  • 獲得標高:1,942m

34kmで1900mUPする強烈な登りです。途中、短い平坦・下りが含まれますが、8〜11%が頻繁に登場し、しかも距離が長いというコース。しかし、風張林道とは異なり、ヒルクラの楽しさを味わえる、すばらしい場所でした。

クライマーと登るのは刺激的

今回誘ってくれたのは愛知のローディ・まっと氏。ロードバイクを購入してから毎週のように愛知の峠を攻め、今やほとんど制覇してしまった彼は、さらなる刺激を求めてわざわざ富士山までやってきた真性の山キチである。

一緒に走ったローディ・まっと氏は小柄で痩せ型の典型的クライマー。毎週峠を登っており、富士山の急傾斜も丁寧に越えていきます。

僕は基本的にケイデンス型で、登りではダンシングも多用するタイプなのですが、まっと氏はケイデンスは低めで走り、ほぼシッティングで登るタイプ。走り方が全然ちがっていて、見ていておもしろいです。

斜度がきついところではどんどん離される感じで、もうちょい痩せないとなーと。軽い人が一定ペースのシッティングで登っていくのを見ると、うらやましくなりますね。一方で、斜度が緩くなったり、ダンシングで加速すると僕が前に出るという感じで、体格のちがいがいかに如実にヒルクライムに影響するかがわかって新鮮でした。

標高450mから2300mまで登ることの意味

富士山の特徴は一定斜度の登りが続く点にあります。カーブも多いのですが、スケールが大きく、道の作りがとにかく大味。Garminの獲得標高はもりもり増えていき、景色は目まぐるしく変わっていきます。

序盤は山麓の樹海を黙々と登っていく感じですが、要所要所で顔を出す富士山がテンションを上げてくれます。きつい登りですが、ゴールが定期的に目に入るので登るモチベーションは維持しやすいです。

3合目で標高は2000mに到達。

空の近さにテンションが上がってヒャッハーしている筆者。撮影:まっと

4合目で2300mになります。3合目までも決して緩いとは言えない斜度が続きますが、カーブが頻発し、斜度も数段アップする4合目以降が本番です。しかし、空が近い!

横を見れば、長野の山々や富士宮市の全景が。この時点で30km以上を休みなく登り続けており、獲得標高も1600mほど。斜度はきつくなる一方ですが、先に行きたい気持ちは強まる一方。

スカイラインの5合目に到着。そして、そこで待っていたのは…。

まっと氏の愛車はRIDLEY PHENIX。山ジャンキーなのに爽やかなホワイト&ブルーのフレームというミスマッチ。

眼下に雲があります。これは美ヶ原でも渋峠でも見られなかった光景です。

伊豆半島から沼津市富士市のある三河湾の海岸線も見えます。土地の立体感がものすごい!めちゃくちゃな表現をするなら、実物大の立体地図を見ているような感じ。いや、これがホンモノの世界なんだけどね。

おそらく、スカイラインは富士山を登る3つの道路「富士3Peaks」の中で一番景色がいいのではないでしょうか。難易度も最上級ではありますが、それに見合った経験ができるはずです。

首都圏最強の激坂「風張林道」のヤバさをまとめてみる。

東京の秘境・檜原村にある「風張林道」。入口からして斜度12%ほどもある。ここにたどり着くまでにも数百m登るため、総合的な難易度は首都圏でもまちがいなくトップクラス。

自転車に乗り始めてすぐにその名前を知った、東京都檜原村にある激坂・風張林道。あちこちのブログでヤバいヤバいと書かれていて、近寄りがたい存在となっていましたが、明神・三国峠や美ヶ原をクリアし、ホイールも換装したのをきっかけにチャレンジしてみることにしました。

スペックは以下の通り。

  • 全長:4.2km
  • 獲得標高:491m
  • 平均斜度:11.7%

和田峠や子の権現とは比較にならない厳しさ

序盤の難所。激烈な斜度がどーんと続いているのがはっきりとわかってしまう。それを太陽に焼かれながら登らなければならない。※ダウンヒル中に上から撮影。

結論から言うと、予想通りのヤバさでした。へるはうんどさんが「四天坂」として、首都圏近郊で有名な激坂4つ(都民の森・和田峠・子の権現、そして風張林道)を一括りにしていますが、はっきり言って風張林道は別格です。ほか3つの峠は、ある程度の根性と脚力またはペダリングスキルがあれば初心者でも登り切れる可能性があると思いますが、風張林道には根性論や小手先のテクニックは通用しないでしょう。

景色はすばらしいが、登っている最中に堪能することはできない。

【風張林道林道の要点】

  • 事実上、1,000mを25km(平均斜度6.7%)で登ることになる。
  • 景色がただの森になってからが長い。正確には速度が出ないので時間がかかる。
  • 天候の影響はばっちり受ける。

僕は都民の森と和田峠をアルミのミニベロロードに乗り始めて3カ月ほどでクリアしています。根性はある部類で、延々続くワインディングや直線を見てもぐっと堪えて黙々と登り続けることでなんとかしました。

子の権現もその後、ロードバイクに乗り換えてからすぐに打開しました。こちらはダンシングのテクニックが必要なので、都民の森と和田峠よりも確実に難しいと思いますが、求められるのは300mの激坂区間を乗り切る技術という側面が強いです。そうした技術は百草園などの短距離激坂で比較的容易に習得できるものでもあります。

中間地点にある「きのこセンター」。風張林道で力尽きたローディはここで舞茸の苗床となり、大地に還るのだ…。

きのこセンターを抜けると、ちょっとした集落がある。無理をせず木陰で休んでもいいだろう。再発進する気になる斜度ではないが。

が、風張林道が求められてくるのは経験です。いくつもの峠を実際にクリアし、自分なりのペース配分や峠攻略手法を確立していないと、とてもではないですが耐えられないと思います。

厳密に言えばこの看板以降が真の風張林道。

数値的に言えば、和田峠より1km長いだけなのですが、出せる時速は5〜6km/hであり、ざっくり計算しても和田峠より10〜12分長く耐えなければなりません。

看板以降は基本的に森の中。地獄の始まりだ。

入口にたどり着くまでもそれなりの距離・斜度であり、高尾駅からすぐに行ける和田峠とは立地面で大きな差があることも、風張林道のほうが圧倒的に難易度が高い理由です。

風張林道にアクセスする場合、始点となる武蔵五日市駅から「前座」として21km強を走り、500mほど登らなければなりません。

ワインディングも強烈。

陽が差し込む区間が半分ほどを占めるため、暑い日は体温が見る間に上昇していきます。風がある日は横風を受ける場合もあるでしょう。

いわゆる「東京都字マチュピチュ」。絶景がモチベーションを回復してくれるが、ここからが長い。

景観がいい区間もありますが、精神的に一番つらい後半は森の中であり、同じような道を延々登ることになります。明神・三国峠や美ヶ原は後半ほど高地特有の高揚感があり、モチベーション面では風張林道ほど過酷ではありませんでした。

終点付近にある「林道風張線」の看板。面白味のない風景と急傾斜が苦行感を高めてくれる。

僕は足付きなしでクリアしたものの、あまりの辛さに30分ほど地面に転がっていました。何もかも使い果たした感じで、ある種の徒労感すらあります。

終点。奥にあるゲートの先に見える奥多摩周遊道路が光の世界のように見えてしまうほど、ズタボロにされた。

風張林道に挑んでみようという人は相当の覚悟を持って、どうぞ。これをクリアできるなら富士山や大弛峠、乗鞍などに挑む時期が来ていると考えていいのではないでしょうか。

530km走って10,000m登る旅は渋峠で終わった。

渋峠にはローディが求めるものがすべてある。

5日間の自転車旅行最終日、ゴールに選んだのは渋峠。信州や群馬を巡ることにした理由は、渋峠があるから。冬季に黙々とヒルクラをしていたのも、渋峠を余裕を持って登り切るため。すべては渋峠のために。

コースは以下の通り。

  • 走行距離:83km
  • 獲得標高:1,925m

前日は浅間山麓・北軽井沢に宿泊。

泊まったのは『かまいたちの夜』や『金田一少年の事件簿』の舞台に選ばれてもおかしくないような、昭和なペンション「コスモス」。1泊朝食付き6,300円とリーズナブル。

ペンションの朝食は地場野菜のサラダとオーナーさん自家製のブルーベリージャムが絶品。

長野と群馬を貫くロマンチック街道を北上して草津を目指します。

これから登る白根山渋峠)付近が突然目の前に現れてテンションはうなぎ上り。

こうしたパノラマは草津まで輪行したのでは見ることができません。今回、自走にこだわったのはこうした山のダイナミズムを味わい尽くしたかったから。

草津温泉街までの登りもなかなか強烈。坂としてのタイプは異なりますが、きつさは箱根の新東海道くらいあるでしょう。

同道した中川苦行氏はズタボロにされた模様。

途中のコンビニで振り返ると、浅間山の姿が。前日の宿泊地がもうあんな彼方に。旅の終わりが近いのを実感。

セブンイレブン草津店から見えた浅間山

温泉街観光は後回しにして志賀高原に突入します。

まだ景色が寒々しい志賀高原

5日間で登った山岳の中で一番寒かったですね。陽の光は暑いくらいなのに、風が冷たい。都内は夏のような陽気だったのでしょう。序盤数キロこそゆるい登りが続きますが、斜度は7〜十数%が延々と続く感じ。美ヶ原ほどきつくはありませんが、都民の森の料金所以降や箱根の小涌谷をイメージしておくといいでしょう。

渋峠名物の雪の壁。

でも、テンションが上がって、ガンガン踏んでしまう。早く渋峠ホテルにたどり着きたい。『弱ペダ』の真波が言っていた「山頂が近づくとギアが自然と上がっちゃう」そのもの。

絶景を写真に収めたいというのもありますが、とにかく全身で山を感じ、登り切って理解することが大事かなと思っています。写真はダウンヒルのときに撮るのが一番いいと思います。

渋峠の美しさを言葉で言い表すのは難しい。美ヶ原が最果てなら、こちらは空まで駆け上がって行ける特別な場所という感じかもしれない。

ローディ、バイカー、乗用車で来た人たちで賑わう国道最高点。『ろんぐらいだぁす!』でその存在を知って、絶対に行くと決めていた。

5日もかけ、何十時間も自転車とともに過ごしましたが、あまりの楽しさにあっという間だったという感想しかありません。

群馬県と長野県の県境にあたる、渋峠ホテル。

終着地はもちろん渋峠ホテル。今年、何があっても行くと決めていた場所にたどり着けた充実感は凄まじいものでした。

ホテルの従業員さんと遊ぶインディーくん。やんちゃらしい。

指輪物語』にモリア鉱山やモルドールがなかったら、歴史に名を残す冒険小説にはなっていなかったでしょう。それとまったく同じ理屈で、僕は今回5日間使って渋峠を目指しました。その意味では、十石峠も美ヶ原も、榛名山も、この旅に絶対に必要な場所だったのです。

渋峠に来るまでの道をカットすることは簡単ですが、そうしなくて良かった。延々と山を越えた結果として、僕にとって長野や群馬は身近な、日常生活の場である東京と地続きの場所になりました。

渋峠ホテルの喫茶にて。

東京からであれば新幹線ですぐに行ける長野と群馬。しかし、自転車に乗るまでは行ってみようとは思いませんでした。僕にとってのロードバイクは、「行こうと思ってもわざわざ行こうとしなかった、どこか遠い場所」に行くための道具なのです。

渋峠を下ったあと、湯畑を散策。

夕暮れの草津から眺める白根山。人里に降りると、山を駆け上がっている時間がいかに非日常の体験かがよくわかる。

帰りは群馬のローカル線・吾妻線輪行。非日常が終わった以上、無駄に自転車には乗りたくない。

今回、行きたいと思っていた場所をかなり潰せたので、次はもっと遠くに行くでしょう。それが今から楽しみで仕方ありません。